どれだけ良い商品やサービスでも、届ける相手を誤れば成果にはつながりません。そこで重要になるのが「理想的な顧客プロファイル(ICP)」です。ICPを明確にすることで、誰に・どんな価値を届けるべきかが整理され、営業やマーケティングの精度が大きく高まります。
本記事では、ICPとは何かを、構成要素と作成方法とともに解説します。
理想的な顧客プロファイルとは?
理想的な顧客プロファイル(ICP:Ideal Customer Profile)とは、自社にとって特に価値の高い顧客像を、営業やマーケティングに活用するためにデータに基づいて明確化したものです。長期的な取引が見込める、成約までの期間が短い、他社への紹介につながりやすいといった特性を持つ顧客が該当します。
ICPはB2Bで用いられ、個人ではなく、自社の製品やサービスから最大の価値を得られる企業を対象とします。多くの場合、業種や地域、企業規模、予算などの条件を盛り込み、1〜2文程度で簡潔に表現されます。
ICPを明確にすることで、高い価値を生みやすいターゲット企業を効率的に特定でき、アカウントベースドマーケティングの基盤として活用できます。ターゲティング精度の向上やメッセージのパーソナライズが進み、営業・マーケティングのリソース配分も最適化されます。
さらに、ICPを各部署と共有することで、営業チームとマーケティングチームの認識が揃い、一貫性のある活動が可能になります。その結果、顧客との関係構築が深まり、成約につながる可能性も高まります。
理想的な顧客プロファイル(ICP)の構成要素
理想的な顧客プロファイル(ICP)を策定する際には、いくつかの代表的な属性を検討する必要があります。特に効果的なICPでは、その中から重要度の高い5〜7項目に絞って定義します。
以下は、データを分析する際に検討すべき、ICPの構成要素と、それを定義する際に役立つ質問例です。
- 業界:理想的な顧客は、どの業界で事業を展開しているか
- 企業規模(従業員数):理想的な顧客は、すでに大規模に事業を展開している企業か、それとも成長途中のスタートアップか
- 企業価値・成長段階:理想の顧客は数千万単位の運営を行っている企業か、それとも中小企業か
- 予算:年間予算はどの程度で、自社の製品やサービスにどれくらい投資する余地があるか
- 年間収益:年間の売上や収益規模はどの程度か
- 資金調達状況:どのような資金源から資金を調達しているか。投資家や出資元はどこか
- 所在地・販売形態:どこを拠点に事業を行っているか。実店舗中心か、それともeコマースが主な販売チャネルか
- 設立年:いつ設立され、どれくらいの期間事業を継続しているか
- 顧客基盤:どのような属性の顧客を主なターゲットとしているか
- 目標・ミッション:企業のミッションは何か。それを達成するために、どのような取り組みを行っているか
- ツール・技術:通常の業務でどのようなテクノロジーやツールを使用しているか
- ネットワーク:業界内でのつながりや、影響力はどの程度あるか。自社の製品やサービスを他社に紹介してくれる可能性はあるか
- 課題:どのような課題やボトルネックを抱えているか。それは自社サービス・商品によって解決されるものか
理想的な顧客プロファイル(ICP)と顧客ペルソナの違い
理想的な顧客プロファイル(ICP)と顧客ペルソナは混同されやすい概念ですが、役割と視点には明確な違いがあります。どちらも「誰に向けて価値を届けるか」を整理するためのものですが、使われる場面や対象が異なります。。
ICPと顧客ペルソナの共通点
- 構成:ICPも顧客ペルソナも、顧客の特徴を具体的に言語化する点が共通しています。
- 用途:どちらも予算感や課題、ニーズといった重要な要素を整理し、営業やマーケティングの判断材料として活用されます。また、B2B企業では、ICPで企業像を定めたうえで、その企業内の意思決定者や担当者を顧客ペルソナとして設定するケースも少なくありません。
ICPと顧客ペルソナの違い
- 対象の範囲:ICPは企業単位の概念で、業界、企業規模、売上、成長段階、資金調達状況など、会社全体の属性に焦点を当てます。対して顧客ペルソナは個人を対象とし、職種、役職、年齢層、関心事、意思決定の傾向など、人の行動や心理に着目します。
- 活用されるビジネスタイプ:ICPは主にBtoBマーケティングや営業戦略で使われ、どの企業を重点的に狙うべきかを判断するための指針となります。一方、顧客ペルソナはB2C領域で用いられることが多く、コピーライティングやメッセージ設計など、個人向けのコミュニケーションを最適化する目的で活用されます。
理想的な顧客プロファイルの作成方法
理想の顧客を特定するために、以下のステップに従ってください:
1. 最も価値のある顧客を特定する
会社の主要な利害関係者と一緒に、受注・継続・解約、LTV、導入期間、利用状況などの社内データに基づき、既存の顧客の中から、最も価値を提供してくれた顧客を特定します。
どの顧客が最も短い期間で成約に至ったのか、見込み客から顧客になるまでにどれくらいの時間がかかったのかを確認します。あわせて、長期的に取引が続いているアカウントや、自社の製品・サービスを他社に紹介してくれた顧客も洗い出します。これらの観点から分析することで、さらに価値の高い顧客を絞り込むことができます。
2. 顧客を比較し、共通点を分析して仮説を立てる
既存の高価値顧客のリストができたら、共通点を探します。これらの顧客が特に価値がある理由は何でか、どの企業属性がその価値を生み出しているのかなどを洗い出します。
業界、企業規模、地域、予算、導入目的、課題、意思決定プロセス、利用ツールなどに注目して、パターンを見つけます。
3. 定性調査で裏付ける
より質の高い顧客データを得るために、現在の高価値顧客へのヒアリングを行います。顧客満足度調査を配布したり、購入理由や考慮事項を把握するためにいくつかの質問をします。購入理由、決め手、検討時の条件、導入後の成果を確認し、仮説の裏付けを行います。
4. ICPを1〜2文で言語化する
高価値顧客が共有する5〜7の属性を特定し、誰が見ても理解できるように、1〜2文にまとめます。
以下がICPの例です。
- 国内に拠点を持つ従業員数50〜300名のIT企業で、専任の営業またはカスタマーサクセスチームを有し、年間数百万円以上のIT投資予算を持つ企業。業務効率化やスケーラブルな成長を目的に、複数のクラウドツールを活用している
- 国内向けECを運営する年商5〜50億円規模の企業で、データ活用による売上改善に関心が高く、専任のEC担当者またはマーケティング担当者が在籍している企業。
- 従業員数30〜200名のB2B企業で、リード獲得や営業効率に課題を抱え、マーケティング施策に年間一定額以上の予算を継続的に投下している企業。意思決定が比較的早く、外部パートナーの活用に前向きである。
5. 潜在顧客を探す
ICPを策定したら、実際の業務に活用します。定義した理想的な属性をもとに企業リストを精査し、優先度の高いリードやターゲット企業を抽出します。優先順位付けする際、合わない企業(導入が難しい、解約が多い等)も明確にすると良いでしょう。
あわせて、ICPを営業・マーケティングチーム等と共有することで認識を揃え、製品開発や施策の方向性も理想の顧客に合わせて調整します。これにより、成果につながりやすい営業・マーケティング戦略を構築できます。
まとめ
ICPは主にB2Bマーケティングや営業戦略で使われ、どの企業を重点的に狙うべきかを判断するための指針となります。ICPと似た概念とされる顧客ペルソナはB2C領域で用いられることが多く、広告表現やメッセージ設計など、個人向けのコミュニケーションを最適化する目的で活用されます。
自社に合ったICPを明確にし、マーケティング戦略や営業戦略の軸として活用していきましょう。
理想的な顧客プロファイルに関するFAQ
ICP作成に必要なデータはどのように集めるべき?
ICPのデータを集めるには、まず既存の顧客を分析し、特に価値の高い顧客を特定します。そのうえで、共通する特徴や行動パターンを整理します。 また、顧客プロファイル作成の過程では、重要な顧客に直接ヒアリングを行い、購入に至った理由や検討時の判断基準などのフィードバックを得ることも有効です。
ICPはどのくらいの頻度で更新すべき?
ICPは少なくとも年に一度は再評価し、更新するようにしてください。優れたICPが素晴らしい結果をもたらしている場合でも、会社データを収集する際に、営業プロセスやマーケティング戦略にいくつかの調整を加えることができるかもしれません。





